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山河残りて草木深し―日本本土決戦(3)

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昭和20年8月14日、長引く戦争により疲弊の極みに達していた日本——

広島長崎への原子爆弾投下とソ連参戦により、これ以上の国体維持が困難と判断した日本帝国政府は連合国に降伏する準備をしていた。
しかし降伏を潔しとしない一派 “神州救國会” がクーデターを起こし内閣を樹立、その新政権により戦争は継続されることとなった。

※実際の歴史時系列と異なり、架空の人物、固有名詞も登場します。

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■ダウンフォール作戦 ―連合国軍の日本本土侵攻計画

一方、連合国軍(米軍)の日本本土侵攻計画はどのようなものだったのか。
天然資源、物量そして工業力など日本を遙かに凌駕する国力を持つ米国は、1945年5月に終結した欧州戦により、兵員や艦船などより多くを太平洋戦線に送り出すことが可能となっていた。
日本が本土決戦においてその国力・資源総てを使わなくてはならない “超総力戦” にて決号作戦を準備していたのと対照的に、米国は日本帝国を屈服させる戦力は、総兵力を差し向ける必要性もなくなっていた。

連合国軍(米軍)の日本本土侵攻計画「ダウンフォール作戦」は二段階で行われることになっており、第一段階は九州侵攻計画「オリンピック作戦」、第二段階は関東侵攻計画「コロネット作戦」となっていた。
「オリンピック作戦」開始は45年11月1日とし、数ヶ月の短期間で南九州の完全制圧を初期目的とした。そして本作戦中を行っても日本政府が降伏しない場合に限り、46年3月あたりに関東へ進撃する「コロネット作戦」を実行するとした。
一見するとやや消極的な作戦ともとれるが、米国は「硫黄島戦」と「沖縄戦」で多大な犠牲を出しており、弱体化した日本軍とはいえ、上陸戦と内陸部での戦闘をすれば前記二戦とは比較にならない犠牲を出すことは目に見えていた。さらに日本の国力から言ってわざわざ 大規模戦をせずとも、列島を包囲しておけば自ずと屈服するであろうという考えも軍内部であった。

しかしながらもう一つの懸念事項としてソビエトの動向があった。
トルーマンとスターリンとの密約によって、45年9月半ばソビエト軍は戦闘を一時的に停止していたが、米国が日本へ積極攻撃を行わないと知ればソビエト軍によって日本本土侵攻作戦が実行され日本占領後、満州朝鮮と共にソビエトの連邦国もしくは傀儡共産国家へと日本が造り上げられることは明白で、これでは米国の描く未来戦後体制 ―米国寄り民主主義諸国陣営の建設― が崩れ、いずれ来るであろう対共産国家戦争(第三次世界大戦)に対抗できないとも言えた。

よって、犠牲をいかにして最小限に抑えかつ日本帝国を降伏せしめ、ソビエトとも妥協点を探ることを考慮した上で日本本土への侵攻を行うとした。

オリンピック作戦 ―九州侵攻作戦

最終的に南九州一円、鹿児島川内と宮崎都農を結ぶライン以南を完全制圧し、同地に戦略爆撃機を離発着可能な飛行場と大規模艦隊泊地を建設(共に占領日本軍基地を改築するとした)、後の関東侵攻作戦に備えるとした。

以下が本作戦に投入される軍団と兵力である。

陸軍第6軍 総司令官:ウォルター・クルーガー中将

主力として投入されるのは、ルソン島上陸作戦を行った第6軍で、4個軍団から構成され各軍団隷属の師団総数は13個師団である。

●第9軍団
*前哨戦として、別働隊が土佐沖で陽動を仕掛ける。その後、主力部隊が薩摩半島南端へ上陸し、鹿児島湾西南部を掃討する。
●第1軍団
*作戦開始と同時に宮崎海岸への上陸。
●第11軍団
*第1軍団と共に宮崎海岸もしくは志布志湾への上陸。
●海兵隊第56任務部隊第5水陸両用軍団
*海兵隊ケラー・ロッキー少将率いる本軍団は、硫黄島上陸戦などで戦った精鋭部隊である。陸軍第6軍指揮下だが、組織的には海兵隊であるため異なる。作戦開始と同時に鹿児島吹上浜海岸へ上陸。

陸軍航空隊第20航空軍 総司令官:カーチス・ルメイ少将

作戦開始二ヶ月前より、戦略爆撃機隊による南九州日本軍陣地への徹底空爆と、後方北九州中国地方へ集中攻撃を敢行し同時に日本全土にも一層の爆撃を加える。主力機はB-29スーパーフォートレスだが、ルメイ少将の肝煎りにより計画を前倒ししてロールアウトした後続機B-36ピースメーカーの先行量産機も投入されることとなっていた。

なお出撃機数(投入機数ではない)は1万5000~2万機を想定していた(45年8月末までの出撃数は約3万5000機)。

海軍太平洋艦隊 第3艦隊 総司令官:ウィリアム・ハルゼー大将

投入される総艦艇数は、揚陸艦、支援補助艦などを含めて約3700隻。その他後方拠点もしくは米本国から逐一輸送船団が往復し、作戦中の艦艇実動総数は1万隻を上回る。

また第20航空軍と歩調を合わせ、戦艦部隊が日本全土への艦砲射撃を行い九州の孤立化を狙う。

●旗艦 戦艦ミズーリ
正規空母(軽空母含む)24 護衛空母22 艦載機約2000機 戦艦10 巡洋艦50 駆逐艦300 他支援・補助艦艇多数 陸上警戒支援機約300機

コロネット作戦 ―関東侵攻作戦

暫定的に以下の陸軍部隊の投入を予定していた。

支援航空部隊はオリンピック作戦に引き続きカーチス・ルメイ少将率いる第20航空軍があたる。

陸軍第1軍 総司令官:コートニー・ホッジス中将

作戦開始と同時に九十九里浜に上陸。各軍団隷属の師団総数は4個師団。

上陸後は西進し松戸近辺まで進出。後から来る第8軍第13軍団と共に東京へ進撃する。

陸軍第8軍 総司令官:ロバート・アイケルバーガー中将

作戦開始と同時に相模湾に上陸。各軍団隷属の師団総数は4個師団。

また、相模湾には作戦開始5日後に増援2個師団、10日後には増援2個機甲師団を投入する。その機甲師団は米軍精鋭のアルヴァン・ギレム中将率いる第13軍団があたり、上陸後北部へ進撃。八王子・立川、熊谷、古河を制圧し東から来る第1軍とともにを東京を包囲するとした。

海軍太平洋艦隊 第5艦隊 総司令官:レイモンド・スプルーアンス大将

基本的にオリンピック作戦の第3艦隊と将旗を換えた同じ艦隊。ただし旗艦を含めて損傷艦の交代は考えられる。またハルゼー大将が引き続き第3艦隊として指揮を執ることもあり得るとした。

(注意)
※IF ワールド シミュレーション戦記です。
※一部の人名、固有名詞は架空のものです。

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―続く―【日本本土決戦(4)】